虫歯があっても矯正治療はできる?治療の順番と予防法を解説

「虫歯があるけど、矯正を始めても大丈夫?」「虫歯を治してからだと時間がかかりそう……」 そんな不安から、矯正治療開始をためらう方は少なくありません。
結論からお伝えすると、虫歯がある場合は、基本的に虫歯治療を完了させてから矯正治療を開始します。
ごく軽度の虫歯であれば矯正を開始することもできなくはありません。しかし先に虫歯治療を終えてから矯正治療を開始したほうが、結果的にスムーズに矯正を進められるでしょう。
目次
虫歯がある状態で
矯正治療は始められるのか

初期の虫歯であれば、経過観察によって矯正を始められることもあります。
一方で、虫歯が進行している場合は、先に虫歯治療を行う必要があります。
虫歯の程度によって対応が異なる

虫歯は進行度によって5段階的に分類され、矯正治療の対応が異なります。
| 虫歯の進行度 | 状態 |
| CO(シーオー) | 歯の表面が白く濁る程度で、穴は開いていない状態 |
| C1 | エナメル質(歯の表面)に小さな穴が開き始めた状態 |
| C2 | 象牙質(エナメル質の内側)まで進行している状態 |
| C3 | 神経にまで虫歯が到達している状態 |
| C4 | 歯の見える部分はほとんどなくなり、歯の根だけ残った状態 |
初期虫歯(CO・C1)の場合
ごく初期の虫歯であれば、経過観察のもとで矯正治療を始められる場合があります。COやC1の虫歯は、歯の表面のエナメル質にとどまる軽度なものです。
初期の虫歯であれば、定期的に歯科でチェックを受けながら矯正を始めることが可能です。
とくに、エナメル質に穴が開く前のCOの段階の虫歯では、フッ素(フッ化物)を使った再石灰化(歯が自然に修復する働き)の促進によって、進行を抑えられることがあります。
ただし、矯正中は装置によって磨き残しが増えやすいため、初期虫歯が悪化するリスクが高まります。経過観察を続けながら、フッ素塗布や丁寧な歯磨きを習慣化することが大切です。
進行した虫歯(C2以降)の場合
虫歯が進行している場合は、矯正治療の前に虫歯治療を優先して行わなければなりません。
C2以上の虫歯は、エナメル質の下にある象牙質にまで細菌が入り込んでいる状態です。放置すると痛みやしみる症状が出るだけでなく、矯正中に悪化して、神経の治療が必要になる場合もあります。
矯正装置を着けたまま虫歯が進行すると、矯正を一時中断して虫歯治療を行う必要があり、治療計画に影響する恐れがあります。
さらに、虫歯が進行して抜歯が必要になると、せっかく整えた歯並びが乱れる可能性もあるため、矯正前にしっかりと治療しておくことが大切です。
矯正治療前に虫歯治療を
優先すべき理由

矯正治療をスムーズに進めるには、事前に虫歯を治しておくことが大切です。
矯正装置を着けると歯磨きがしにくくなったり、唾液がお口の中に十分に行き渡らなくなったりして、虫歯が進行するリスクが高まります。
矯正装置装着後は
虫歯治療が困難になる
ワイヤー矯正では、歯に装着したブラケットやワイヤーを外して虫歯治療を行わなくてはなりません。そのため、矯正の治療期間が延びる可能性があります。
マウスピース矯正の場合は装置の取り外しが可能です。治療がしやすい一方で、虫歯治療で大きく歯の形が変わると、マウスピースが合わなくなることがあります。
治療期間が長引くだけでなく、マウスピースの作り直しによる追加費用が発生する場合もあるのです。
虫歯が進行すると
矯正計画に影響が出る
矯正中に虫歯が進行すると、治療を一時中断する場合があり、せっかく立てた矯正計画を変更する必要性が出てきます。
また、虫歯が抜歯を要するほど進行した場合、これまで整えてきた歯並びに影響が出ることもあるでしょう。
抜歯により周囲の歯が動いてしまうと歯並びが乱れやすくなるため、事前の虫歯治療が欠かせないのです。
矯正前の虫歯治療の期間と
スケジュールの目安
矯正前に行う虫歯治療は、軽度であれば1〜2回の通院で済むことが多く、進行した虫歯でも数週間から数か月で完了することが一般的です。
虫歯治療が必要な場合の、一般的な治療スケジュールは次の通りです。
- 初診・検査で虫歯の有無を確認
- 必要に応じて虫歯治療を開始
- 矯正治療計画の立案
- 矯正装置装着スタート
矯正治療に入る前にお口の中の環境を整えておくと、治療をスムーズに進められるだけでなく、予期せぬ治療期間の延長や、追加費用の発生といったリスク低減にもつながります。
矯正治療中に虫歯ができて
しまった場合の対処法

矯正治療中に虫歯が見つかっても、必ずしも治療の中断が必要になるわけではありません。虫歯の進行度によって、装置を外さずに治療できる場合もあります。
矯正治療は中断されるのか
軽度の虫歯であれば、矯正治療を続けながら虫歯治療を並行して行えます。
進行した虫歯の場合は、一時的に矯正装置を外して治療を行い、治療後に再び装置を装着して矯正治療を再開します。
治療期間が延びる可能性がありますが、歯の健康を守るためには必要な対応です。
装置を外さずに治療できるケース
初期の虫歯であれば、ワイヤー矯正でも装置を外さずに治療できる場合が多く、通院回数も少なく済みます。
マウスピース型矯正では、治療時のみ装置を外して虫歯治療を受けられます。
装置を一時的に外す必要があるケース
ワイヤー矯正を行っていて、虫歯が進行している場合や、歯の形を調整する必要がある場合は、装置を外して治療を行います。
一方、マウスピース型矯正では、虫歯治療によって歯の形やかみ合わせが変わると、装置を作り直す必要があります。
矯正装置の種類による
虫歯リスクの違い

矯正装置によって、虫歯になりやすい理由は異なります。ワイヤー矯正は装置の形状によって磨き残しができやすく、マウスピース型矯正装置は、歯に唾液が届きにくくなる点が虫歯のリスクにつながります。
装置ごとの特徴を理解して、予防策を取り入れることが大切です。
ワイヤー矯正(表側・裏側)の
虫歯リスク

ワイヤー矯正は、歯にブラケットという小さな装置を固定し、ワイヤーで歯を動かす方法です。歯の表側に付ける「表側矯正」と、裏側(舌側)に付ける「裏側矯正」があります。
ワイヤー矯正では、以下の点に注意が必要です。
- ブラケット周りやワイヤーの下に食べかすや、虫歯の原因である歯垢(細菌のかたまり)が溜まりやすい
- 装置が固定されているため、通常のブラッシングでは届きにくい箇所がある
磨き残しがあると虫歯菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯ぐきの炎症につながります。
マウスピース矯正の虫歯リスク

マウスピース型矯正装置は取り外し可能な装置で、矯正前と同じように、歯磨きできる点がメリットです。
しかし、装置を装着している間は歯全体がマウスピースに覆われるため、唾液による虫歯予防の効果が十分に発揮されにくくなります。
唾液には次のような働きがあります。
- 殺菌作用:細菌が増えるのを抑える
- 自浄作用:お口の汚れを洗い流す
- 緩衝作用:歯の表面を溶かす酸を中和し、お口を中性に保つ
- 湿潤作用:お口を潤して粘膜を守る
- 消化作用:食べものの消化を助ける
マウスピース内に汚れが残ると細菌が増えやすいため、装置を清潔に保ち、食後は必ず歯磨きを行う習慣が大切です。
矯正装置は虫歯リスクや手入れのしやすさに加えて、日常生活での利便性やライフスタイルへの影響を考慮して選ぶことが大切です。
矯正治療中の虫歯予防法

矯正中は装置のまわりに汚れがたまりやすく、虫歯や歯ぐきの炎症のリスクが高くなります。
毎日のセルフケアと、歯科医院でのプロフェッショナルケアを併用することが大切です。
毎日の歯磨きのポイント
矯正装置を付けていると、ブラケットやワイヤーのまわりに、歯垢や食べかすが残りやすくなります。
歯ブラシを使い、装置のすき間や歯と歯ぐきの境目までしっかり磨きましょう。
また、虫歯予防のために、フッ素配合の歯磨き剤を活用するのもおすすめです。
フッ素には、次のような虫歯予防効果が期待できます。
- 初期の虫歯を修復する再石灰化作用
- 酸に負けないよう歯の質を強化する作用
- 虫歯菌の働きを弱める作用
また、歯ブラシの毛先が開いていると汚れを落とす力が低下します。1か月に1度を目安に歯ブラシを交換し、背面から見て毛先が広がっていないか定期的にチェックしましょう。
補助清掃器具の活用方法
矯正器具の周りや歯と歯のすき間の汚れをしっかりと落とすために、歯ブラシだけでなく、デンタルフロスやタフトブラシといった、補助清掃器具を活用するのがおすすめです。
- デンタルフロス:歯と歯のすき間の狭い箇所に使用し、歯の側面の汚れを落とす。
- 歯間ブラシ:歯と歯のすき間の広い箇所に使用する。さまざまなサイズのものがあるため、歯のすき間に合ったサイズを選ぶ。
- ワンタフトブラシ:毛束が一つだけの小さな歯ブラシ。矯正装置のまわりや奥歯の細かい部分など、歯ブラシの毛先が届きにくい箇所の清掃に適している。
実際に、歯ブラシだけでは歯と歯のすき間の歯垢は6割程度しか落とせませんが、デンタルフロスや歯間ブラシを併用すると、歯垢の除去率が約8割まで向上するとされています。
(参考:神奈川県|今日から始めるすき間ケア~毎日のむし歯・歯周病対策~)
定期検診とプロフェッショナルケア
矯正治療中は、3〜6か月を目安に定期検診を受けましょう。
歯科衛生士によるブラッシング指導や、専用の機器を使ったお口のクリーニングなどのプロフェッショナルケアを受けることで、日常のケアでは落としきれない汚れをしっかり除去できます。
また、ブラッシング指導を受けて磨き残しの多い箇所を把握することは、毎日のセルフケアの質向上につながります。
セルフケアとプロフェッショナルケアの併用が、虫歯予防のポイントです。
当院の治療症例紹介
症例1:矯正中に虫歯が多発した症例
こちらの患者さまは、セルフケアが不十分で、残念ながら虫歯が多発してしまいました。
| 年齢 | 15歳 |
| 性別 | 男子 |
| 治療の概要 | 反抗期になり、歯を磨かず、ワイヤー矯正中に虫歯が多発した |
| 治療時の注意事項 | ワイヤー装置を装着すると、いつも以上に丁寧に歯を磨く必要があります。 |
| 治療法 | ワイヤー矯正が完了し装置を外した後に虫歯治療予定 |
| 費用 | 虫歯治療は保険適用 |
ワイヤー装置時

虫歯初期

虫歯多発

ワイヤー除去

ワイヤー装着中は歯磨きが難しくなり、虫歯ができやすくなります。矯正期間中は、毎日の歯磨きをより丁寧に行い、虫歯予防に努めましょう。
矯正歯科と一般歯科の
役割分担について

矯正治療中に虫歯や歯ぐきのトラブルが起きた場合「矯正歯科では対応してくれないのでは?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし、矯正歯科が専門の歯科医院の場合でも、一般歯科と連携をとりながらお口全体の健康を守る治療を受けられます。
また、一般歯科治療も行える矯正歯科であれば、矯正治療中でもそのまま虫歯や歯周病の治療を進められるでしょう。
矯正専門医と一般歯科医の連携体制
矯正専門医は歯並びやかみ合わせを整える治療を担当し、虫歯や歯周病などの治療は一般歯科医が行います。
矯正治療中でも、必要に応じて一般歯科と連携しながら治療を進めます。
矯正治療前や治療中に、虫歯が見つかった場合の対応は主に3つです。
- かかりつけの一般歯科で治療する
- 連携している一般歯科に依頼する
- 一般歯科も行っている矯正歯科であれば、そのまま虫歯の治療を行う
かかりつけの歯科がない場合には、矯正歯科で連携している一般歯科医への紹介状を書いてもらい、矯正歯科以外で虫歯治療を行うこともあります。
同じ歯科で矯正と虫歯治療ができる場合は、同じ先生に診てもらえる点もメリットです。
トラブル防止のために、矯正治療前のカウンセリング時に、虫歯治療の対応について確認しておきましょう。
当院は虫歯治療も行なっています
矯正治療中でも、虫歯や歯ぐきのトラブルは早めに対応することが大切です。
当院では、矯正治療を行いながら、虫歯や歯周病などの一般的な歯科治療にも対応可能です。
治療は痛みに配慮して進めており、表面に塗るタイプの麻酔薬や、一定の速度でゆっくりと麻酔を注入できる「電動注射器」、非常に細い注射針などを使用することで、できるだけ負担の少ない方法で処置を行います。
また、治療の内容についても、歯科衛生士や歯科医師が丁寧に説明しながら進めますので、不安なく治療を受けていただけます。
矯正中もお口の健康は非常に重要です。虫歯や歯ぐきの状態に不安がある場合は、早めにケアを受けましょう。
お口全体の健康サポートを受けながら矯正治療を始めたい方は「歯科あべクリニック」へご相談ください。


