マウスピース矯正ができない人の8つの特徴と解決法を解説

「マウスピース矯正で自分の歯並びは治せるのかな…」と心配される方も多いのではないでしょうか。
マウスピース矯正は、見た目を気にせず矯正治療が受けられる治療法ですが、すべての症例に適応できるわけではありません。
本記事では、マウスピース矯正ができない方の特徴や、解決法をわかりやすく解説します。
目次
マウスピース矯正ができない人の8つの特徴

マウスピース矯正はさまざまな症例に対応できる治療法ですが、以下の場合は対応できない可能性があります。
- 重度の歯周病がある人
- 重度の不正咬合がある人
- あごの骨格に問題がある人
- 歯を大きく動かす必要がある人
- インプラント治療をしている人
- 親知らず以外の埋伏歯がある人
- 永久歯が生え揃っていない人
- 自己管理が難しい生活習慣の人
本章では、マウスピース矯正ができない方の特徴を8つご紹介します。
1.重度の歯周病がある人
重度の歯周病がある方はマウスピース矯正に限らず、すべての矯正治療においてリスクが伴います。
歯周病はお口の中の細菌が、歯ぐきや歯を支えるあごの骨に炎症を起こす病気です。
歯周病が進行するとあごの骨が溶け、歯を支える力が弱くなります。
この状態で、歯を移動させる矯正治療を行うと、歯が抜け落ちてしまう可能性があるのです。
とくに、マウスピース矯正では装置が歯を覆うため、歯周病の原因であるプラーク(歯垢)がお口の中にたまりやすく、歯周病の症状が悪化する可能性があります。
まずは歯周病の治療を優先し、治療が終わってからマウスピース矯正が行えるかを再度確認しましょう。
2.重度の不正咬合がある人
重度の受け口や出っ歯、複雑な歯並びといった不正咬合では、歯を大きく動かす必要があるため、マウスピースを用いた矯正では十分な効果が得られにくくなります。
ワイヤー矯正は歯を大きく動かす治療を得意とするため、重度の不正咬合がある方では、ワイヤー矯正が推奨されるケースが多くなります。
また、見た目では軽度の不正咬合と思われる場合でも、歯とあごの位置やかみ合わせが大きくずれているケースもあるため注意が必要です。
マウスピース矯正が適応になる不正咬合かどうかを確認するためには、歯科医院にてかみ合わせをチェックしたりレントゲン検査を受けたりする必要があります。
3.あごの骨格に問題がある人
あごの骨格が原因で、歯並びに悪影響をもたらしている場合は、歯を動かす治療であるマウスピース矯正やワイヤー矯正だけで治療することは困難です。
出っ歯や受け口、顎変形症などで、骨格の問題が大きい場合には、歯の移動だけでは改善が難しいため、外科矯正が検討されます。
たとえば、出っ歯の中でも、あごの骨格に問題はなく、歯だけが前に出ているタイプでは、マウスピース矯正やワイヤー矯正による治療が可能です。
一方で以下のケースでは、あごの骨そのものを改善する必要があるため、外科矯正が必要となる可能性が高いといえます。
- 上顎の骨が大きく、前に突き出ている
- 下顎の骨が小さく、上顎が相対的に前に突き出て見える
骨格に大きな原因があるのかを見極めるためにも、まずは歯科医院にてしっかりと検査を行い、適切な治療計画を立てることが大切です。
4.歯を大きく動かす必要がある人
歯を大きく移動させる必要がある場合、マウスピース矯正は適さない可能性があります。
マウスピース矯正は、歯を細かく動かす場合には適していますが、歯を垂直に大きく動かしたり、奥歯まで歯列全体を大きく動かしたりする治療には、向いていないといえます。
こうしたケースでは、マウスピース矯正だけでは十分な矯正効果が得られず、治療期間が長引く可能性もあります。
重度の不正咬合により、歯を大きく動かす必要がある治療は、歯を動かす力が強いワイヤー矯正が必要となる可能性が高いでしょう。
歯並びの状態によっては、ワイヤー矯正とマウスピース矯正を併用する「ハイブリッド矯正」が可能なケースもあります。
5.インプラント治療をしている人
インプラントは歯を失った箇所に、人工歯根を埋め込み、その上に人口の歯をかぶせる治療法です。
天然の歯のようなしっかりとした嚙み心地が得られるのが特徴ですが、人工歯根が顎の骨に直接結合しているため、歯列矯正で動かすことはできません。
とくに、お口の中に複数のインプラントがある場合、周りの歯を移動させるスペースが制限されるため、マウスピース矯正では理想的な歯並びを作ることが難しくなります。
インプラントが複数ある場合には、歯を動かさずに歯並びを整える「セラミック矯正」といった方法を検討する必要があります。
6.親知らず以外の埋伏歯がある人
本来生えるはずの歯が、あごの骨の中に埋まっていて正常に生えてこない状態を「埋伏歯(まいふくし)」といいます。
埋まっているのが親知らずの場合は、マウスピース矯正による治療が可能ですが、親知らず以外の埋伏歯を正しい位置に並べるためには、歯ぐきを切開し、埋まっている歯を引っ張り出す処置が必要となります。
こうした治療はマウスピース矯正では行えないため、ワイヤー矯正が必要となります。
埋伏歯の治療では、治療を始める前にレントゲンやCT検査によって、治療計画を立てることが重要です。
レントゲン検査で、埋伏歯の方向や周りの組織の状態を確認し、CT検査により歯根とあごの神経の位置を詳しく確認します。
7.永久歯が生え揃っていない人
まだ永久歯が生え揃っていない場合、マウスピース矯正は適さない可能性があります。
乳歯が残っている状態で歯列矯正を行うと、以下の理由から歯並びが変わってしまい、治療計画を立て直す必要が出てきます。
- 治療途中で乳歯が抜けてしまう
- 永久歯が新しく生えてくる
- 親知らずが生えてくる など
治療計画をスムーズに進めるためにも、マウスピース矯正は永久歯を対象とした歯列矯正といえます。
乳歯が残っているお子様で歯並びが気になる場合には、検診時に相談してみましょう。
8.自己管理が難しい生活習慣の人
マウスピース矯正は、ご自身で取り外しできるのがメリットである一方、自己管理が重要です。
たとえば、以下のような管理が求められます。
- 1日20時間以上装着する
- 食事の際は必ず外し、歯磨きを行ってから再度装着する
- 定期的に通院をする
こうした管理が十分に行われない場合、矯正効果が十分に発揮されず、治療期間が延びる可能性があります。
したがって、患者様のライフスタイルによっては、マウスピース矯正が難しいケースもあります。
自己管理に自信がない方や、ライフスタイルに合わない方は、ワイヤー矯正やセラミック矯正といった治療法を検討する必要があります。
マウスピース矯正ができない場合の解決法

マウスピース矯正ができない場合は、以下のような解決法があります。
- 歯周病治療
- ワイヤー矯正
- ハイブリット矯正
- 外科矯正
症状に応じて適切な治療を行うことで、マウスピース矯正が可能になったり、他の矯正方法で歯並びを改善したりすることができます。
ここでは4つの代表的な解決法をご紹介します。
歯周病治療
重度の歯周病のある方は、歯ぐきや歯を支える骨が不安定な状態のため、マウスピース矯正による治療は困難です。
しかし、歯周病治療を行い進行を抑えることでマウスピース矯正が可能になる場合があります。
歯周病治療の基本は、毎日の歯磨きによる適切なセルフケアと、歯科医院での定期的なプロケアによって、歯周病の原因であるプラーク(歯垢)をコントロールすることです。
また、あごの骨の吸収が進んでいる場合は、骨移植などの手術で骨を再生する方法も検討が必要です。
矯正治療の前に、まずは歯周病治療を優先して行い、歯ぐきと骨の状態を改善しましょう。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、歯の表面や裏側にブラケットと呼ばれる小さな装置を装着し、ブラケットの中心にある溝にワイヤーを通して歯を移動させる方法です。
適応範囲が広く、軽度から重度の不正咬合まで、さまざまな症例に使用できます。
歯の表面に装置をつける「表側矯正」が一般的ですが、目立ちやすさを気にされる方もいます。
見た目が気になる方は、ワイヤーやブラケットを白いタイプに変更したり、歯の裏側にブラケットを装着する「舌側矯正」を選択したりすると、目立ちにくくなるでしょう。
また、ワイヤー矯正では、矯正装置を取り外せないため、お口のお手入れがしづらくなります。
むし歯や歯周病を防ぐために、丁寧なデンタルケアが必要です。
マウスピース矯正が難しい重度の不正咬合の場合は、ワイヤー矯正を検討しましょう。
症例 14歳・女性
マウスピース矯正ができずにワイヤー矯正になった症例をご紹介します。
Before

After

年齢 | 14歳 |
性別 | 女性 |
マウスピース矯正ができない理由 | 犬歯が高い位置にあり、マウスピースの良好なフィットが望めないため |
治療方法 | ワイヤー矯正 |
治療期間 | 1年4か月 |
費用 | 55万円 |
ハイブリット矯正
ハイブリット矯正は、マウスピース矯正とワイヤー矯正を組み合わせた治療法です。
まずワイヤー矯正で大きく歯を動かした後、マウスピース矯正に切り替えて歯を細かく動かしていきます。
ハイブリット矯正の活用により、マウスピース矯正単独では対応が難しい「歯の大きな移動」が可能になり、場合によっては治療期間の短縮も期待できます。
患者様の歯並びの状態や、ご要望にあわせて柔軟に治療計画を立てられるため、ワイヤー矯正とマウスピース矯正、両方の長所を活かせる治療法といえるでしょう。
外科矯正
あごの骨格自体に問題がある場合は、ワイヤー矯正やマウスピース矯正だけでは限界があるため、外科矯正を検討します。
外科矯正では歯並びだけでなく、顔の骨格を改善できるのが特徴です。
骨格が問題となる不正咬合は以下のものがあります。
- 上顎、下顎のどちらかが大きすぎる
- 上顎、下顎のどちらかが大きく出ている
- あごが曲がっている など
外科矯正では、まずワイヤー矯正にて歯を移動させて位置を整えたうえで、あごの骨の手術を行います。
事前にワイヤー矯正を行うのは、手術後の正しいかみ合わせの位置に歯を移動させるためです。
骨格が原因で起きている不正咬合かを確認するために、まずは歯科医院にて検査を行いましょう。
マウスピース矯正ができない人に関連するよくある質問

ここでは、マウスピース矯正ができない方に関連する、よくある質問をご紹介します。
内容によっては、マウスピース矯正で対応できるケースもあるため、参考としてご覧ください。
出っ歯はマウスピース矯正で治せる?
歯並びが原因で出っ歯になっているケースは、マウスピースで矯正で改善できます。
また、軽度であれば骨格に問題がある出っ歯の治療も可能なケースがあります。
出っ歯には以下の3つのタイプがあります。
- 骨格的には問題なく、歯だけが前に出ている
- 上顎の骨が大きく、前に出ている
- 下顎の骨が小さく、上顎が相対的に前に出ている
このうち一つ目の「歯だけが前に出ている」タイプでは骨格的な問題はないため、マウスピース矯正にて治療が可能です。
ほかの二つは骨格が原因の出っ歯であるため、マウスピース矯正での治療は難しく、外科矯正を検討する必要があるでしょう。
関連記事:インビザラインで出っ歯は治せる?適応のタイプや治療の症例を紹介
八重歯はマウスピース矯正で治せる?
重度の八重歯(やえば)を除き、マウスピース矯正で治療ができます。
八重歯は叢生(そうせい)と呼ばれる、歯並びがガタガタになる不正咬合の一つです。
なかでも、八重歯は犬歯が外側や上にずれてほかの歯と重なってしまう状態です。
以下のような重度の八重歯ではマウスピース矯正が難しい場合があります。
- 犬歯が大きく飛び出している
- ほかの歯との重なりが大きい
- きれいな歯並びを作るためには奥歯まで動かす必要がある
前歯だけマウスピース矯正ってできる?
前歯のみでも、歯を動かす距離が短いケースではマウスピース矯正による治療が可能です。
たとえば、以下のケースが該当します。
- 前歯のわずかなすき間や出っ歯
- 前歯の軽度の叢生
ただし、奥歯のかみ合わせに問題がある場合は、歯列全体を動かす必要があるため、マウスピース矯正での治療が難しい場合があります。
マウスピース矯正できるのか迷ったらお気軽にご相談ください

マウスピース矯正は、多くのメリットがある治療法ですが、お口の中の環境や歯並びの状態によっては、適応とならない場合があります。
マウスピースによる矯正治療が可能かどうかを正しく知るためには、歯科医院にてしっかりと検査を受けることが大切です。
また、マウスピース矯正が難しい場合でも、さまざまな矯正方法の中から、ご自身のライフスタイルやニーズに合った治療法を、納得した上で選択することが重要です。
マウスピース矯正ができるか迷われた際は、栃木県足利市の「歯科あべクリニック」へお気軽にお問い合わせください。
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