口呼吸は矯正で改善|原因と歯列矯正の効果を解説

口を閉じると苦しい、よくいびきをかく……それは「口呼吸」のサインかもしれません。
歯並びや鼻づまり、舌の位置などが原因で、知らないうちに口呼吸が習慣になっている人は少なくありません。口呼吸は、見た目の変化やむし歯・歯周病のリスクを高めるだけでなく、集中力の低下や睡眠の質の悪化など、健康面にもさまざまな影響を及ぼします。
本記事では、口呼吸の原因や、改善方法のための矯正治療について、わかりやすく解説します。
目次
口呼吸とは?こんな症状に要注意

口呼吸とは、普段から口で息をする呼吸状態のことです。私たちの呼吸の基本は鼻呼吸です。しかし、歯並びや鼻づまりなどが原因で、口呼吸が癖になってしまう方も少なくありません。
以下のような症状は、口呼吸が原因で起きている可能性があります。
- 寝ているときに口が開いている
- いびきや歯ぎしりをしている
- 朝起きたときに口や喉が乾燥している
- 唇がいつも乾いている
- 風邪をひきやすい
- 食事中にくちゃくちゃ音を立ててしまう
- 前歯のかみ合わせに違和感がある
- 集中力が続かず、ぼーっとすることが多い
とくに子どもの場合、口呼吸になっていることに自分では気づきにくいため、周囲の大人が早めに異変を察知することが大切です。
口呼吸になる主な原因

口呼吸が習慣化する背景には、いくつかの要因があります。ここでは、以下2つの原因について解説します。
- 歯並びの問題
- 鼻づまりや口周りの筋力低下の問題
口呼吸の改善には、なぜ口呼吸になっているのかといった「原因」を正しく知ることが重要です。
歯並びの問題(出っ歯・受け口・開咬)
歯並びの異常によって、口呼吸につながるケースは少なくありません。以下のような歯並びは口が閉じづらく、口呼吸の原因になりやすいため、とくに注意が必要です。
歯並びの種類 | 特徴 |
出っ歯(上顎前突) | 上の前歯に対して、下の前歯が著しく前にある歯並び。前歯が前に出ているため、転倒したりぶつけたりしたときに歯が折れるリスクがある。 |
受け口(下顎前突) | 上の前歯に対して下の前歯が前にある歯並び。食べものが噛みづらい、発音がしにくいといった影響がある。 |
開咬(かいこう) | 奥歯でかみ合わせたときに、上下の前歯の間にすき間がある歯並び |
このような歯並びの問題がある場合は、早めに矯正治療を検討しましょう。口呼吸だけでなく、発音や咀嚼機能についても改善が期待できます。
鼻づまりや口周りの筋力低下
鼻が詰まりやすい体質や、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などがある場合、鼻呼吸が難しく口呼吸が習慣になります。
また、口のまわりの筋力である口輪筋(こうりんきん)や頬の筋肉が弱いと、口を閉じる力が足りず、口がぽかんと開いてしまうことがあるのです。
「お口ぽかん」と呼ばれる口唇閉鎖不全は、口呼吸と深く関係しているとされており、日本の子どもの約3割にこの状態がみられるという報告もあります。
(参考:新潟大学|子どもの“お口ぽかん”の有病率を明らかに -全国疫学調査からみえた現代の新たな疾病-)
放置すると歯並びやあごの発達、さらには全身の健康にも影響を及ぼすことがあるため、早期の対応が重要です。
口呼吸が与える悪影響

「ただの癖」のように思われる口呼吸ですが、放置すると見た目の変化や健康への影響を引き起こす可能性があります。
ここでは、「顔つき」と「身体の健康」という2つの側面から、口呼吸のリスクを解説します。
顔貌への影響(アデノイド顔貌)
口呼吸が習慣化することで「アデノイド顔貌」と呼ばれる顔つきになる場合があります。
鼻の奥にある「アデノイド」というリンパ組織が大きくなることで、空気の通り道が狭くなり鼻で呼吸がしにくくなるため、口呼吸が増えてしまうのです。
アデノイド顔貌とは、以下のような特徴をもつ顔立ちのことです。
- 面長
- いつも口がぽかんと開いている
- 口周りの筋肉が緩んでいる
顔つきへの影響を防ぐためにも、早めに歯科や耳鼻科で相談し、適切な治療や診断を受けることが大切です。
健康面への影響
口呼吸によって引き起こされる健康への影響には、次のようなものがあります。
健康への影響 | 説明 |
むし歯や歯周病のリスク増加 | 口呼吸により、口の中が乾燥し、唾液の分泌量が減少する。唾液が減ることで、細菌が繁殖しやすくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まる |
感染症にかかりやすくなる | 鼻呼吸ができないと空気中のウイルスや細菌が鼻のフィルターを通らず、そのまま体内に入りやすくなる |
いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスク増加 | 口を開けて寝ることで、舌が下がり気道がふさがれるため、いびきが起きやすくなる |
睡眠の質低下、集中力の低下 | いびきや睡眠時無呼吸症候群により睡眠の質が低下し、日中の集中力の低下にもつながる |
歯並び・あごの発達への影響 | 舌や口周りの筋肉が正しく使われないことで、あごが十分に発達せず、歯並びにも悪影響を及ぼす |
口呼吸は見た目への影響だけでなく、健康面や日常生活の質にも深く関わってくるため、放置せず早めの対応が重要です。
口呼吸矯正の方法を比較

口呼吸の改善には、簡単に取り組めるセルフケアから、根本的な改善を目指す治療まで、さまざまな方法があります。
ここでは、口呼吸の根本的な改善が目指せる方法として、市販の矯正テープと比較した際の歯列矯正の特徴についてご紹介します。
口呼吸矯正テープの効果と限界
睡眠中に口を閉じるようサポートする「口呼吸矯正テープ」は、手軽に始められる口呼吸対策のひとつです。市販されており手に取りやすいことや、使い方が簡単で始めやすいのがメリットです。
一方で、口呼吸矯正テープはあくまで対症療法であり、歯並びや骨格の問題がある場合には十分な効果が得られないこともあります。
また、鼻づまりがある状態でテープを使うと、呼吸がしにくくなることもあるため、使い方やタイミングには注意が必要です。
歯列矯正による根本的な改善
歯並びの問題で口呼吸が起きている場合、歯列矯正により根本的な改善が目指せます。歯列矯正では歯並びが整うだけでなく、以下の効果が期待できます。
- 出っ歯や開咬などを改善して口を閉じやすくする
- 上下のあごのバランスを整える
- 舌の正しい位置が保ちやすくなる
歯並びを改善することで口呼吸の原因そのものを改善し、無理なく鼻呼吸へと移行できるようになるでしょう。見た目の改善と同時に、健康面でのメリットも大きいのが歯列矯正の特徴です。
歯列矯正による口呼吸の改善治療って?

出っ歯や受け口、開咬といった歯並びの乱れが原因で口呼吸になっている場合は、矯正治療で歯並びを整えることで、鼻呼吸がしやすくなる可能性があります。
ただし、歯並びの状態や年齢、あごの発達状況により、適した治療法は異なります。それぞれの年齢や症状にあわせて、最適な方法を選ぶことが大切です。
子どもの口呼吸矯正
子どもの矯正治療の最大の特徴は、あごの成長を利用できる点です。成長期に合わせて治療を始めることで、歯を抜かずに整った歯並びを目指せます。
子どもの口呼吸矯正では、急速拡大装置を用いた口呼吸の改善や、舌や口の周りの筋肉を鍛えるトレーニングを行います。
急速拡大装置とは上あごの幅を広げる矯正装置で、歯だけでなく、あご全体を理想の大きさに整えることができます。成長段階にある子どものうちに矯正を行うことで、口呼吸を改善しやすくなるでしょう。
大人の口呼吸矯正
大人の場合でも、歯並びを整えることで、口が閉じやすくなり、鼻呼吸への改善が期待できます。
歯並びが整うと歯磨きがしやすくなり、むし歯や歯周病のリスクを減らせるほか、食べものをしっかり噛めることで消化吸収がスムーズになるなど、日常生活にも良い影響があります。
さらに、口元に自信が持てるようになるのも、矯正治療の大きな魅力です。
また、矯正治療と聞くと、目立ちやすい金属の矯正装置を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
当院では、目立ちにくく取り外しも可能な「マウスピース型矯正装置」を取り扱っております。
装置が透明で目立ちにくいため、矯正中の見た目を気にされる方や、金属アレルギーが心配な方にも適しています。
また、装着中でも装置を取り外して普段通りの歯磨きが行えるため、むし歯や歯周病予防のために、お口のケアをしっかり行いたい方にもおすすめです。
実際の治療例
実際に当院の矯正治療を通じて、「お口ポカン」や「口の乾燥」などを伴う口呼吸の改善が見られた症例を2例ご紹介します。
症例①:子どもの口呼吸改善例
治療前

治療開始

治療中

治療後

年齢 | 8歳 |
性別 | 女性 |
治療の理由 | 前歯で噛み切れない、朝起きると口が乾いている |
治療方法 | 顎顔面矯正 |
治療期間 | 2年2か月 |
費用 | 44万円 |
症例②:大人の口呼吸改善例
治療前

治療中

治療後

年齢 | 21歳 |
性別 | 女性 |
治療の理由 | いつも口がポカンと開いてしまう、前歯が出っ歯になっている |
治療方法 | プレート矯正 |
治療期間 | 1年8か月 |
費用 | 44万円 |
【治療に関する注意点】
- 治療結果には個人差があります。
- 矯正治療に伴い、一時的な痛みや違和感が生じることがありますが、数日で消失します。
- 稀に、歯根吸収や歯肉退縮などの偶発症が発生する可能性があります。
- 治療期間や費用は、症状の程度や治療計画によって異なります。
- 治療後は、後戻りを防ぐために保定装置の使用が必要です。
口呼吸改善のセルフケア
口呼吸の原因が歯並びにある場合、矯正治療によって根本的な改善が期待できます。ただし、すべての口呼吸が矯正だけで治るわけではなく、日常的な習慣の改善や筋力トレーニングが効果的な場合があります。
ここでは、ご自宅で取り組めるセルフケアをご紹介します。
あいうべ体操

「あいうべ体操」は、口のまわりの筋肉と舌の筋力を鍛える体操です。以下のように「あ・い・う・べー」と口を大きく動かしましょう。
- あ:口を大きく開く
- い:口を大きく横に広げる
- う:口を前に突き出す
- べ:下を突き出して下にのばす
1日30セットを目安に、無理のない範囲で続けてみましょう。口を閉じる力がつき、口呼吸から鼻呼吸への改善が期待できます。
正しい舌の位置

舌の正しい位置は、上あごの前歯の少し後ろにある膨らみ(スポット)に舌先があたり、舌全体が上あごに吸いついている状態です。
舌が下がっていると、口が開きやすくなり、口呼吸につながります。日常的に舌を上あごにつけることを意識すると、口呼吸の予防・改善につながります。
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そんな不安や疑問をお持ちの方は、当院の無料相談をご利用ください。当院の無料相談は矯正治療の正しい情報をお伝えすることを目的としており、無理に治療をすすめることはありません。
小児から大人の方まで、患者様の状況に合わせた治療をご提案いたします。
口呼吸や歯並びでお悩みの方は、「歯科あべクリニック」へご相談ください。無料相談は24時間いつでもWebからご予約いただけます。