マウスピース矯正で前歯だけ治療はできる?適応と不適応例・費用と治療期間も紹介

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前歯のすき間や出っ歯、歯のねじれが気になっている方のなかでも「全体矯正までは必要ない」「目立つ部分だけを整えたい」と思われる方は少なくありません
そうしたご要望に応える方法のひとつが、前歯だけを対象としたマウスピース矯正です。

部分的な歯並びの乱れにアプローチできるため治療期間や費用を抑えやすく、ライフスタイルに合わせて気軽に始められる点が大きな特長です。

この記事では私が日々の診療で多くご相談をいただく「前歯だけのマウスピース矯正」について、対応できる症例や向いていないケース、費用や期間、メリット・デメリットまでを整理して解説します。
部分矯正を検討されている方の参考になれば幸いです。

※「前歯」とは、一般的に前から数えて6〜8本程度を指します。前歯だけの治療といっても、マウスピースは奥歯までしっかり覆う設計になっている点をご理解ください。

前歯だけのマウスピース矯正で治療できる5つの症例

歯の隙間や傾きが前歯に限られている場合や過去の矯正後に起こった後戻りなどは、マウスピース矯正でも十分に対応可能です。

以下では、実際に前歯だけの治療で改善が期待できる代表的な症例を5つに分けて紹介します。

それぞれの症状について、どんな見た目の悩みがあるのか、なぜマウスピースで整えられるのか、そして注意点なども併せて解説していきます。

1.すきっ歯(空隙歯列)

年齢20代女性
費用33万円
期間9ヶ月
お悩みすきっ歯

すきっ歯(空隙歯列)は、前歯の間に1〜3mm程度のすき間がある状態を指します。
見た目の印象だけでなく、発音が不明瞭になる・食べ物が詰まりやすいといった実生活での悩みを抱える方も少なくありません。

マウスピース矯正は、すきっ歯の改善に効果を発揮しやすい治療法のひとつです。
前歯を少しずつ中央へ寄せるように設計できるため、歯を削らずに自然に整えることが可能なケースも多く見られます。

ただし、隙間の広さや原因によっては、IPR(歯の間をわずかに削る処置)を併用する場合があります。
この処置は痛みもほとんどなく、治療期間も比較的短く済むのが特徴です。

すきっ歯は放っておくと隙間が広がることもあります。軽度であれば数か月で整うことも多く、早めのご相談をおすすめしています。

2.出っ歯(上顎前突)

年齢20代女性
費用77万円
(別途:調整料3,300円/月)
期間12ヶ月
お悩み上の前歯が前に突出していることとガタガタになっていることが気になる

出っ歯(上顎前突)は、上顎の前歯が前方に傾いている状態を指します。
「前歯が出て見える」「口を閉じにくい」という見た目の問題だけでなく、唇が乾燥しやすい・口呼吸になりやすいといった機能面の悩みにもつながります。

軽度のケースであればマウスピース矯正で前歯の角度を内側に戻すことができ、口元の突出感を抑えつつ、唇の乾燥や閉じにくさを改善する効果が期待できます。

一方で骨格自体にズレがある場合や噛み合わせ全体に問題がある場合は、マウスピース矯正のみでは十分な改善が難しいことがあります。
この場合は全体矯正や外科的治療との併用が必要になるため、診断の段階で適応を見極めることが重要です。

出っ歯は、歯の角度を整えるだけで大きく印象が変わるケースもあります。見た目と機能、両方のバランスを考えて治療方針を立てるので、治療満足度が高い傾向です。

3.軽度のガタガタ歯(不正咬合)

年齢20代女性
費用55万円
期間1年2ヶ月
お悩み歯並びがガタガタで磨きにくい

軽度のガタガタ歯(叢生)は「前歯が1本だけ飛び出している」「数本が重なっている」といった状態を指します。
このような症例は部分矯正やマウスピース矯正で対応できる代表的なケースであり、全体矯正を必要としないため、比較的短期間で改善が期待できます。

例えば、片方の側切歯が内側に倒れている、1本だけ外側に飛び出しているなど、前歯2〜3本程度の歯並びのズレです。


矯正によって見た目が整うだけでなく歯ブラシが届きやすくなることで清掃性が向上し、虫歯や歯周病の予防につながるという機能的なメリットもあります。

ただし歯列に十分なスペースがない場合は、IPR(歯と歯の間をわずかに削る処置)を併用して歯を動かす余地を作ることがあります。

歯の重なりは、見た目よりも清掃性に影響します。小さな乱れこそ、早めに対処することで長期的なトラブルを防げますよ。

4.ねじれ歯(捻転歯)

年齢10代女性
費用44万円
期間12ヶ月
お悩み前歯のねじれが気になる

歯が回転して斜めに生えている「ねじれ歯(捻転歯)」は、マウスピース矯正が比較的対応しやすい症例のひとつです。
特に前歯の側切歯(2番)に見られることが多く、1本だけねじれているだけでも口元の印象が大きく変わってしまいます。

見た目の問題だけでなく、歯の接触面がずれていることでブラッシングが不十分になりやすく、虫歯や歯石のリスクが高まる点も注意すべきポイントです。

軽度のねじれであれば、歯列全体を大きく動かさずに前歯のみで回転を補正できるケースが多くあります。


一方でねじれの度合いや位置によっては、周囲の歯とのバランスを調整しながら治療を行う必要があるため、適応範囲を正しく見極めることが重要です。

歯の回転による違和感は、患者さまご自身が一番敏感に感じていることが多いです。小さなねじれでも、整うと笑顔に自信が持てるようになりますよ。

5.矯正後の後戻り治療

過去に矯正治療を受けた方でも、リテーナーの装着を途中でやめてしまった場合や歯ぎしり・食いしばりの影響によって、前歯に軽い傾きや隙間が生じることがあります。

このような「後戻り」は多くが軽度であり、マウスピース矯正で再度整えることが可能です。


再治療では短期間で改善できるケースも多く、見た目の修正だけでなく、再び正しい噛み合わせを取り戻すことにもつながります。

さらに、後戻りの再治療をきっかけにリテーナーを継続して使用する習慣を徹底することで、歯並びを長期的に安定させやすくなるというメリットもあります。

後戻りは誰にでも起こり得る現象です。早めに対処すれば、比較的短期間で理想の位置に戻すことができますよ。

前歯だけのマウスピース矯正で治療できない症例

前歯だけのマウスピース矯正は、すべての方に適応できるわけではありません。

噛み合わせや歯の状態、顎の骨格バランスなどによっては、部分矯正では不十分となり、全体矯正や別の治療法が必要になるケースもあります。

ここでは、マウスピース矯正で前歯だけを治すことが難しい4つの代表的な症例をご紹介します。

噛み合わせに問題がある

上下の噛み合わせに大きなズレがあると、前歯だけを整えても全体のバランスが崩れてしまいます。
たとえば、上下の歯が深く噛み込んでいる「過蓋咬合」や、前歯が噛み合わない「開咬」は、部分矯正では根本的な改善が難しい症例です。

無理に前歯だけを動かすと顎関節に負担がかかり、頭痛・肩こり・咀嚼時の違和感といった二次的な不調を招くことがあります。
こうした場合は見た目だけで判断せず、噛み合わせ全体を考慮した矯正治療が推奨されます。

抜歯を必要とする矯正

歯列全体に歪みがあり歯が並ぶスペースが明らかに不足している場合は、歯を少し削るだけでは不十分で、抜歯が必要となることがあります。
特に中等度〜重度の叢生(歯のガタつき)がある場合、1〜2本を抜歯してスペースを確保して全体のバランスを整えながら歯を移動させる必要があります。

このようなケースで前歯だけのマウスピース矯正を行うと十分な改善が得られないだけでなく、噛み合わせ不良や見た目のアンバランスにつながる可能性が高いため、全体矯正を検討すべきです。

重度の歯周病の方

歯周病が進行している場合、マウスピース矯正の力に歯が耐えられないことがあります。
歯を支える「歯槽骨」が溶けて弱くなっていると、矯正の力で歯がさらにぐらついたり、病状を悪化させる恐れがあります。

特に重度の歯周病では、矯正治療よりもまず歯周病治療を優先することが大切です。
歯周病の進行を止めて歯周組織が安定した後であれば、歯科医師の慎重な管理のもとでマウスピース矯正を行うことが可能です。

前歯にインプラント治療歴がある

前歯にインプラント治療歴があると、マウスピース矯正は制限が生じやすくなります。
インプラントは天然歯のように動かすことができず、固定されているため、隣接する歯だけを動かすと歯列全体のバランスが崩れることがあります。

また、インプラント周囲にはスペースの制約が生じやすく、矯正の自由度が下がる点も課題です。


このような場合は、インプラントを含めた全体的な治療計画が必要となり、高度な専門知識を持つ歯科医師の判断が欠かせません。

前歯だけのマウスピース矯正のメリット・デメリット

部分矯正は「短期間・低コストで歯並びを整えたい」というニーズに応えやすい一方で、適応範囲や治療後の安定性に課題が残る場合もあります。

ここでは、前歯だけを対象としたマウスピース矯正のメリットとデメリットを整理し、それぞれの特徴を解説します。

メリット

  • 矯正期間が短い
  • 費用が安い
  • 矯正中の痛みが比較的少ない

全体矯正では通常2〜3年かかりますが、前歯だけの部分矯正なら3〜9か月程度で完了することが多く、結婚式や就職活動といったイベントに向けて治療を始める方に向いています。

費用面でも、全体矯正が80〜160万円前後かかるのに対し、前歯のみなら15〜50万円程度に抑えられるケースが多く、経済的な負担が軽減されます。

また、動かす歯が限られているため加わる力が小さく、ワイヤー矯正で感じやすい強い痛みや違和感も少ない点が特徴です。

デメリット

  • 適応外になる場合がある
  • 骨格から歯並びをきれいにできるわけではない
  • 健康な歯を削る処置が必要な場合がある
  • 歯並び全体のバランスが崩れる可能性がある

骨格に由来する出っ歯や深い噛み合わせは部分矯正だけでは改善できず、無理に行うと歯列全体のバランスを崩す恐れがあります。

また、歯を並べるためのスペースが不足している場合には、健康な歯の間を0.1〜0.3mm程度削る「IPR」と呼ばれる処置が必要になることがあります。

さらに、部分的に動かした歯は元の位置に戻ろうとする力が働きやすく、リテーナーを怠ると数か月で後戻りしてしまうリスクがあります。

かみ合わせ全体を根本的に改善できるわけではないため、将来的に顎関節症や肩こりといった不調が改善しないこともある点に注意が必要です。

【症例別】前歯だけのマウスピース矯正|費用・期間・通院回数

前歯だけのマウスピース矯正は、症例によって治療期間・費用・通院回数が異なります。

以下の表に一般的な目安をまとめました。歯の状態や希望する仕上がりによって変動するため、参考としてご覧ください。

症例すきっ歯出っ歯ガタガタ歯ねじれ歯(捻転歯)
費用約30〜35万円約30〜45万円約40〜50万円約20〜30万円
期間3~6ヶ月6~12ヶ月6~12ヶ月3~6ヶ月
通院回数月1回月1回月1回月1回

前歯だけの矯正でも、費用が医療費控除の対象になる場合があります。

まとまった金額の支払いが難しい場合には、デンタルローンを利用し、月々の分割払いにすることも可能です。

また、矯正後は必ず治療期間と同等の保定期間を設け、リテーナーを装着して歯を安定させる努力が必要です。

これを怠ると、せっかく整えた歯並びが再びずれてしまうリスクがあります。

前歯だけのマウスピース矯正なら歯科あべクリニックへ

「前歯だけを整えたい」「費用をできるだけ抑えて短期間で改善したい」と考えている方にとって、部分矯正は現実的で魅力的な選択肢です。

ただし、適応できる症例には限りがあり、無理に行うと噛み合わせや歯列全体に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、矯正歯科で専門的な診断を受け、自分の歯の状態に合った治療法を選ぶことが大切です。

歯科あべクリニックでは、カウンセリングで一人ひとりの症例を丁寧に確認し、前歯だけで十分なのか、全体矯正が必要なのかを誠実にご案内しています。
強引な勧誘は行わず、セカンドオピニオンとしてのご相談も歓迎していますので安心してご来院ください。

まずは無料相談を活用し、笑顔に自信を持てる未来を手に入れてみませんか?
矯正治療は見た目を整えるだけでなく、将来の歯の健康を守るための大切な治療です。

当院では、患者さまの生活習慣や将来設計まで考慮し、長く安定する歯並びを一緒に目指していきます。

どんな小さな疑問でも構いません。ぜひお気軽にご相談ください。

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