「せっかく矯正したのに、歯が戻ってしまったらどうしよう……」そんな不安を感じている方は少なくありません。矯正後の歯を安定させるためには「リテーナー（保定装置）」を正しく使うことが大切です。

この記事では、リテーナーの種類や装着時間の目安、快適に続けるためのコツを紹介します。矯正後も整った歯並びで笑顔を作り続けられるよう、リテーナーの正しい知識を身に付けましょう。

リテーナーの役割と必要性

矯正で歯並びを整えても、治療直後の歯はまだしっかりと安定していません。これは、歯を支える骨や歯茎などの周囲組織が、まだ新しい位置に十分適応していないためです。

歯は元の位置に戻ろうとする性質があるため、リテーナーを使わずに過ごすと、せっかく整えた歯並びやかみ合わせが乱れてしまうことがあります。

リテーナーは、こうした歯の動きをやさしく支え、矯正治療で得た歯並びを安定させる装置です。

矯正後のリテーナーとは

リテーナーとは、矯正治療で整えた歯の位置を安定させるために使用する装置のことです。

矯正装置のように歯を動かす力はありませんが、矯正後の歯並びを維持する役割を持ちます。

リテーナーを継続的に使用することで、治療の成果をしっかりと定着させ、矯正後も自信を持って笑える美しい歯並びを維持できます。

リテーナーの種類と特徴

リテーナーには、大きく分けてマウスピース型、ワイヤー型、プレート型の3種類があります。それぞれ形や素材、装着方法が異なり、ライフスタイルや目的に応じて選択します。

マウスピース型リテーナー

マウスピース型は透明なプラスチックでできた装置で、お一人お一人の歯の形に合わせて作られます。

取り外しができるため食事や歯磨きがしやすいことや、透明で目立ちにくいといった点がメリットと言えます。

このタイプは、矯正後の歯並びを自然に保ちたい方や、見た目を気にする方に向いています。ただし、装着時間を守らないと効果が十分に得られないため、ご自身での管理が必要です。

ワイヤー型リテーナー

ワイヤー型は、歯の裏側に細いワイヤーを固定するタイプです。取り外す必要がなく、装着を忘れる心配がありません。見た目にもほとんど目立たないのが特徴です。

使い始めは少し違和感がありますが、慣れると気にならなくなる場合が多いでしょう。ご自身でリテーナーを管理するのが難しい方や、確実に歯並びを固定したい方に向いています。

プレート型リテーナー

プレート型リテーナーは、プラスチック製のプレートとワイヤーを組み合わせた装置で、歯の表側にワイヤーを付け、裏側のプレートで歯を挟むように装着します。

すべての歯を覆う構造のため、歯列全体をしっかり固定できるのが特徴です。

取り外しできるため食事や歯磨きの際に便利ですが、装着感がやや強く、最初は話しにくさを感じたり違和感を覚えたりする場合があります。

抜歯を伴う矯正治療を行ったケースや、歯並び全体の安定がとくに必要な方に適した方法と言えるでしょう。

装着期間と時間の目安

矯正で整えた歯並びを長く保つには、リテーナーを決められた期間・時間を守って装着することが重要です。

保定の総期間は矯正治療の内容により異なりますが、1～5年程度が目安です。矯正治療にかかった時間と同程度をイメージするとわかりやすいでしょう。

（参考：東京科学大学（Science Tokyo）｜矯正治療Q＆A）

後戻りを防ぐために、歯科医師の指示に従って装着するのが大切です。

初期装着期間の目安

矯正治療直後の歯はまだ安定しておらず、後戻りが起こりやすい状態です。そのため、保定期間の最初の段階では、食事と歯磨きの時間以外は、ほぼ1日中装着することが推奨されます。

装着を怠るとリテーナーが合わなくなったり、歯が少しずつ動いて後戻りが起きたりする場合があります。

維持期（夜だけ装着）の目安

歯がある程度安定してきたら、リテーナーの装着時間を徐々に減らしていきます。多くの場合、夜寝るときだけの装着に切り替えが可能です。

夜間だけの装着になっても、後戻りを防ぐために、歯科医師の指示する装着時間や装着方法を守りましょう。

装着時の痛みや違和感への対処法

リテーナーを装着したときに痛みを感じたり、違和感を覚えたりする場合、歯の後戻りや、リテーナー自体のトラブルが原因の場合があります。

痛みを放置すると歯並びの乱れ、お口の中のトラブルにつながる可能性もあるため、原因を把握し適切な対策を行うことが大切です。

痛みの原因と一般的な対策

リテーナーを装着したときに痛みや違和感がある場合、主な原因として次のようなことが考えられます。

痛みの原因	内容
リテーナーが合わない	歯の動きや口の形に合わないリテーナーを使用していると、歯や歯茎に負担がかかり痛みを生じる可能性があります。
リテーナーの変形や破損	落下や噛み癖などでリテーナーが変形すると、正しい位置に装着できず痛みが出る場合があります。
歯の後戻りが起きている	矯正後の歯が元の位置に戻ろうとすると、リテーナーが合わなくなり痛みや違和感が生じます。

まずは正しく装着できているかを確認し、痛みが続く場合は歯科医院でリテーナーを調整してもらいましょう。

定期検診を受けるときは必ずリテーナーを持参し、お口の中の状態を確認することも、痛みや違和感を事前に予防するポイントです。

リテーナーの装着を
さぼるとどうなるか

矯正後のリテーナーは、歯並びを安定させるために欠かせません。装着を怠ると、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起こり、思わぬトラブルにつながることがあります。

とくに矯正直後の歯は動きやすく、たった1日でもリテーナーを着けるのを怠ると、装着しているときに痛みを感じる原因となる場合があります。

さぼった場合のリスク

リテーナーの装着が不十分だと、次のようなトラブルの原因になる恐れがあります。

• 装着時に痛みや違和感が出る
• リテーナーが浮いて入らなくなる
• リテーナーの作り直しが必要になる
• 後戻りが大きい場合は再矯正が必要になる場合もある

無理に装着すると歯や歯茎を傷付ける可能性があるため、「着けると痛い」「リテーナーがうまく入らなくなった」といった場合は、早めに歯科医院に相談することが大切です。

リテーナーの装着時間が不足する理由として、「装着するのを忘れた」「痛みや違和感がある」「外出先に持っていくのを忘れた」といった理由が考えられます。

リテーナーの装着時間が不足しないよう、次のような工夫を取り入れることが大切です。

• 就寝前のルーティンに組み込む
• 持ち運び用ケースを活用する
• 定期的に通院して後戻りチェックを受ける

ホワイトニングとの併用について

リテーナーを装着中でも、マウスピース型のリテーナーであればホームホワイトニングを行えます。

ホームホワイトニングとは、歯科医師の指導のもとで、患者様自身が行うホワイトニングです。

専用のマウスピースにジェル状の漂白剤を入れて、ご自身で装着します。自宅でのリラックスタイムに行えるため、忙しい方でも取り入れやすいの方法です。

効果は穏やかですが、歯科で行うオフィスホワイトニングに比べて色戻りしにくい特徴があります。

併用時の注意ポイント

リテーナーを装着したままでもホームホワイトニングは可能ですが、正しい使い方を守ることが重要です。

装着タイミング	ホワイトニング用薬剤をリテーナーに入れる際は、指定された時間を守り、長時間の装着は避けましょう。
薬剤の種類・影響	リテーナーの材質によっては、薬剤が変色や変形の原因になることがあります。 自己判断せず、歯科医師に確認してください。
使用後の清掃	ホワイトニングの薬剤が残らないよう、リテーナーはしっかり洗浄します。
定期的な歯科チェック	歯やリテーナーの状態を定期的に確認しながら、ホワイトニングを進めましょう。

生活シーン別の装着アドバイス

矯正後の歯並びを守るには、リテーナーを生活の一部として上手に取り入れることが大切です。日常での使い方を工夫することで、無理なく続けやすくなります。

食事・就寝・外出時のポイント

リテーナーを正しく使うためには、習慣化しやすい方法を取り入れることが大切です。以下のポイントを参考にして、日常生活で無理なく管理しましょう。

日常生活におけるリテーナー装着のポイント	内容
食事中は必ず外す	飲食中にリテーナーを装着すると、変形や破損、着色の原因になります。 硬い食べものや熱い飲みもの、粘着性のある食品はとくに注意が必要です。
外した際は専用ケースに入れる	取り外したリテーナーはポケットやテーブルに置かず、専用ケースで保管しましょう。 紛失や破損を防ぎ、衛生的に管理できます。
毎日の洗浄を習慣化する	使用後は歯ブラシで優しく洗浄し、汚れや細菌を落とします。 必要に応じて専用の洗浄剤を使うのもおすすめです。
就寝時の装着をルーティン化する	就寝前の歯磨き後にリテーナーを装着する習慣を作ると、装着忘れを防ぎやすくなります。
外出時の管理を工夫する	外出や外食時は専用ケースを必ず持参しましょう。 リテーナーを一時的に外す場合、ティッシュに包んで置くと誤って捨ててしまうことがあるため、必ずケースに入れて保管してください。

メンテナンスの定期受診

長期的に整った歯並びを維持するために、定期的な歯科受診とメンテナンスが欠かせません。

矯正後の歯は徐々に安定していきますが、完全に固定されているわけではないため、日々のリテーナー装着に加え、歯科での定期的なチェックが重要です。

定期受診により、歯並びの後戻りやかみ合わせの異常といったトラブルの早期発見につながります。

定期的な歯科受診の目安

矯正後の整った歯並びを安定させるために、3か月～1年に1回程度、定期的に歯科を受診しましょう。

定期検診では、おもに次の項目をチェックし、歯並びやお口の中にトラブルが起きていないかを確認します。

• 歯並びやかみ合わせのチェック
• リテーナーの状態の確認
• むし歯や歯周病の確認

リテーナーが合わなくなっていたり、変形したりしている場合には、リテーナーの調整や再作製を行います。

まとめ
正しい装着で歯並びを守る

矯正後の歯並びを長く保つためには、リテーナーを正しく使い続けることが大切です。

日常生活の中で工夫を加えながら、ご自身のペースで無理なく続けていきましょう。

定期的な歯科受診と、ご自身でのケアをあわせて行うことで、美しい歯並びを長く維持できます。

当院では、小さなお子様からシニアの方まで、幅広い世代の方にご来院いただいております。

むし歯や歯周病の治療、インプラント治療まで幅広く対応しており、お口全体をトータルでサポートできるのが特徴です。

矯正治療後もメンテナンスを継続し、お口の健康を守ることは、将来にわたって多くの歯を残す結果につながります。

矯正後も長くお口の健康を守りたい方は、足利市の「歯科あべクリニック」へご相談ください。